川越市の南西部に位置するエリア「南大塚・大東地区」。
西武新宿線 南大塚駅を中心に、住宅地と畑が混在する落ち着いた街です。
本川越駅からわずか1駅ですが、蔵の街の観光エリアとは異なる雰囲気・歴史があります。
古墳時代の遺跡群、幕末から続く伝統行事、そして廃線マニアに知られる安比奈線跡――。
観光ガイドではあまり取り上げられない、川越のもうひとつの歴史がこのエリアには詰まっています。

この記事では、南大塚の地名の由来や大東地区の成り立ち、南大塚駅の歴史、周辺の見どころを紹介します。
- 古くから古墳や塚の多かったことを由来と考えられる南大塚
- 古墳や餅つき踊りなど歴史・文化のあるエリア
- 安比奈線跡や周辺スポットまでまとめて掲載
南大塚駅とは
南大塚駅(みなみおおつかえき)は、埼玉県川越市南台三丁目にある西武新宿線の駅です。
1895年(明治28年)に川越鉄道(現・西武鉄道)が久米川仮駅(現・東村山駅)〜川越駅(現・本川越駅)間を開業した2年後、1897年(明治30年)11月14日に開業しました。
本川越駅からは1駅、3分程度の立地。
西武新宿駅までは急行利用で約50分ほどの距離にあります。
南大塚駅の主な沿革としては以下です。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1897年(明治30年) | 川越鉄道の駅として開業 |
| 1925年(大正14年) | 安比奈線が開業(砂利運搬用の貨物線) |
| 1963年(昭和38年) | 安比奈線が事実上の休止 |
| 1980年(昭和55年) | 橋上駅舎の使用を開始。駅本屋が約100m所沢方へ移設 |
| 2017年(平成29年) | 安比奈線が正式に廃止 |
| 2025年(令和7年) | 遠隔対応駅に変更。窓口での切符販売を終了 |
現在は橋上駅舎の構造で、南口・北口の両方から利用できます。
改札前のスペースには、2024年に西武鉄道工務部の若手社員の発案で設置された「西武安比奈線メモリアルコーナー」があり、現役当時の写真や路線図が展示されています。
駅の北口方面には、かつて安比奈線が分岐していた線路跡が空き地として残っています。
南大塚の地名の由来
「大塚」から「南大塚」へ
南大塚という地名は、もともと「大塚村」でした。
1879年(明治12年)、郡区町村編制法により入間郡が成立した際、同じ入間郡内に「大塚村」が2つ存在する問題が生じました。
そこで南側の大塚村を「南大塚村」、北側の大塚村を「北大塚村」(現・坂戸市)に改称して区別したのが始まりです。
「大塚」の由来
では、もとの「大塚」はどこから来たのか。
地名の「塚」は一般的に古墳や塚を指すことが多く、南大塚の一帯には実際に南大塚古墳群が存在しています。
古墳群のなかでもこのエリアは特に大きな塚があったことが、地名の由来になったと考えられています。
ただし、大塚の由来を直接裏付ける資料や古文書は確認されていません。
参考資料
- 『角川日本地名大辞典 11 埼玉県』(角川書店、1980年)
南大塚・大東地区の歴史・成り立ち
南大塚駅周辺は、現在の川越市の行政区分では「大東(だいとう)地区」に含まれます。
この大東地区がどのようにして生まれたのか、明治の町村合併から順にまとめました。
1889年(明治22年):大田村と日東村の誕生
明治22年の町村制施行に伴い、旧来の小村が合併して大田村と日東村、2つの村が生まれました。
南大塚村・大塚新田村・豊田本村・豊田新田・池辺村の5村が合併し、大田村(おおたむら)に。
村名は「南大塚」の「大」と「豊田」の「田」を組み合わせたものです。
大袋村・大袋新田・藤倉村・山城村・増形村の5村が合併し、日東村(にっとうむら)に。
1943年(昭和18年):大東村の誕生
戦時中の昭和18年、大田村と日東村が合併して「大東村(だいとうむら)」が発足しました。
村名は大田村の「大」と日東村の「東」を組み合わせたものです。
合成地名が2段階で重なっているのが大東地区の特徴で、「大田」も「日東」もそれぞれ合成地名であるため、元をたどると合計10の旧村にたどり着きます。
1955年(昭和30年):川越市に編入
1955年、大東村は隣接する芳野村・古谷村・南古谷村・高階村・福原村・山田村・名細村・霞ケ関村とともに川越市に編入され、現在の川越市域が確定しました。
参考資料
現在も大東市民センター、大東中学校、大東公民館などに「大東」の名前が残っています。
南大塚の歴史
古墳時代:南大塚古墳群
南大塚エリアの歴史は古墳時代にまでさかのぼります。
南大塚古墳群は、入間川の支流である新河岸川(旧赤間川)右岸の台地縁辺部に位置する古墳群。
古墳時代後期(6〜7世紀)のものと言われています。
川越市の公式情報によれば、1号墳から9号墳と山王塚古墳の計10基で構成されています。
1969年(昭和44年)に埼玉県選定重要遺跡に選定されました。
参考資料
山王塚古墳(国指定史跡)
南大塚古墳群のなかで最も注目されるのが、山王塚古墳です。
2023年(令和5年)3月20日に国の史跡に指定されました。
川越市内の国指定史跡としては、河越館跡(昭和59年指定)以来、2件目です。
山王塚古墳は、方形の壇(下方部)の上に円丘(上円部)を乗せた「上円下方墳」という極めて珍しい墳形を持ちます。
発掘調査で墳形が確認された上円下方墳は全国でも6例しかなく、山王塚古墳はそのなかで日本最大規模。
川越市公式サイトの情報をもとにした、主な規模を以下でまとめます。
| 項目 | 規模 |
|---|---|
| 上円部直径 | 37m |
| 下方部一辺 | 69m |
| 周溝外縁一辺 | 約90m |
| 墳丘盛土の高さ | 5m |
| 築造時期 | 7世紀後半(飛鳥時代) |
埋葬施設は全長約15mの横穴式石室と推定され、玄室と前室を持つ複室構造です。
出土品には須恵器の平瓶やフラスコ形長頸瓶、ガラス小玉、鉄釘片などがあります。
出土遺物の一部は川越市立博物館で展示されています。
被葬者については、古墳の規模と墳形から「古代入間郡域における枢要な地位の人物」と推定されています。
墳頂には古墳名の由来となった山王社の祠があります。
山王神社のため、狛犬ではなく「狛猿」。
これは山王信仰において猿が神の使いとされることによるものです。
発掘調査の成果
1984年以降、複数回の発掘調査が行われています。
2003年(平成15年)の第2次調査では、5号墳・7号墳・8号墳が調査され、銀象嵌の刀装具が発見されました。
また、鴻巣市の生出塚埴輪窯跡群で焼かれた円筒埴輪が確認され、市川市の山倉古墳出土埴輪と同一工人によるものである可能性も指摘されています。
南大塚の「塚」が地名の由来だとすれば、1,400年以上前の古墳が現在の町名にまで影響を与えていることになります。
参考資料
幕末〜現代:南大塚の餅つき踊り
南大塚には古墳だけでなく、幕末から続く民俗行事も受け継がれています。
南大塚の餅つき踊りは、西福寺(南大塚2丁目)の境内で毎年成人の日の前日に行われる年間行事。
埼玉県指定無形民俗文化財(昭和52年3月29日指定)です。
川越市公式サイトによると、もともとは11月15日に裕福な家で長男・長女の7歳の帯解き祝い(現在の七五三)として行われ、「接待餅」と呼ばれていました。
餅つき連中を招いて賑やかに餅をつき、ついた餅を親戚や近所に配るというものでした。
ただし、当時はどの家でも行えるわけではなく、「お大尽」と呼ばれるような裕福な家に限られていたようです。
大正末期から第二次世界大戦にかけて一時中断しましたが、戦後に再開。
1948年(昭和23年)に成人の日が制定されてからは、新成人の門出を祝う行事として西福寺境内で行われるようになりました。
現在は成人祝いとは切り離された新春の行事として定着しています。
餅つき踊りの手順は、ナラシ → ツブシ → ネリ → 三テコ → 六テコ → アゲヅキの順に進みます。
つき手は3人もしくは6人を基本とし、唄に合わせて踊りながら餅をつくのが特徴です。
西福寺でひととおりの演技を終えると、臼に綱をつけて引きずりながら餅をつく「引きずり餅」をして、隣接する菅原神社に参拝します。
参考資料
安比奈線跡 – 南大塚駅から延びていた幻の貨物線

南大塚駅には、かつて安比奈線(あひなせん)という西武鉄道の貨物線が接続していました。
ちなみに、朝比奈新田などは「あいなしんでん」という読みですが、この安比奈線は「あひなせん」と読みます。
1925年(大正14年)、入間川で採取した砂利の運搬を目的として安比奈線が開業。
南大塚駅から安比奈駅まで約3.2kmの単線で、関東大震災後の復興需要に伴う砂利輸送で活躍しました。
しかし、砂利採取の規制強化や需要の減少により、1963年(昭和38年)に運行を休止。
以後50年以上にわたって「休止線」という扱いが続き、線路や架線柱がそのまま残された状態が鉄道ファンの間で話題を呼びました。
一時は西武新宿線の複々線化に伴う車両基地計画(安比奈車両基地構想)が浮上し、安比奈線の活用が検討されましたが、2016年に計画は中止。
2017年(平成29年)5月31日に正式に廃止されました。
正式廃止後に架線柱は撤去されましたが、レールや枕木は一部区間で今も残されています。
南大塚駅のホームからも、北側にカーブしながら延びる線路跡の空き地を見ることができます。
なお、NHK連続テレビ小説『つばさ』(2009年)のオープニングシーンや劇中シーンに安比奈線跡が使われたことでも知られています。
安比奈線跡の詳しい歩き方や見どころについては、こちらの記事で紹介しています。

南大塚周辺のスポット
西福寺(木宮山 地蔵院)
上述した「南大塚の餅つき踊り」が行われる寺院。
1633年(寛永10年)に覚諶和尚が中興開山したと伝わっています。
境内には季節ごとの花が楽しめ、蝋梅の季節には甘い香りが漂います。
【🏠 住所】
〒350-1162 埼玉県川越市南大塚2丁目3-11
【🚃 アクセス】
西武新宿線南大塚駅から徒歩10分程度
南大塚菅原神社
西福寺に隣接する神社。
社殿は菅原神社東古墳の上に建てられており、古墳の上に神社が乗っているという独特の構造をしています。
餅つき踊りの「引きずり餅」の到着地でもあります。
【🏠 住所】
〒350-1162 埼玉県川越市南大塚2丁目4-7
【🚃 アクセス】
西武新宿線南大塚駅から徒歩10分程度
山王塚古墳
上述した国指定史跡。
南大塚駅から徒歩約25分、またはJR・東武東上線 川越駅から市内循環バス(21系統)で約10分「豊田町二丁目」下車。
住宅地のなかにひっそりとたたずんでいます。
川越総合卸売市場
南大塚駅の北西側に位置する市場。
毎週土曜日に市場開放デーが開催されており、「生鮮漁港川越」での新鮮な海鮮や、「マーケットテラス 川越市場の森 本店」でのランチが楽しめます。
南大塚駅周辺のランチ
南大塚駅周辺のランチについてはまだ一軒しか開拓できておらず…!
今後随時追加していきます。
「らーめん よし丸」よし丸らーめん

お店の看板メニュー「よし丸らーめん」。
少し太めの麺と濃厚な魚介とんこつスープが特徴的で、麺の量も多くボリューム満点!

一口ごとに魚介の旨味が広がり、しっかりとしたコクを楽しめる一杯…!
【🏠 住所】
〒350-1168 埼玉県川越市大袋650
川越総合卸売市場の敷地内
【🚃 アクセス】
– 西武新宿線 南大塚駅から徒歩30分程度
– 川越水上公園、安比奈親水公園から徒歩30分程度
【⏰ 営業時間】
月火木金土:10時00分~20時00分
日曜日のみ:10時00分~15時00分
定休日:水曜日

西武新宿線 南大塚駅のアクセス
南大塚は、川越の蔵の街エリアとは異なる歴史と個性を持つエリアです。
1,400年前の古墳群、幕末から続く餅つき踊り、明治期の町村合併で生まれた大東地区の成り立ち、そして大正時代に開業し令和に廃止された安比奈線。
南大塚駅に来た際は、観光ガイドには載りにくい歴史やスポットをぜひ巡ってみてください。











コメントもお気軽にどうぞ